政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
十四年前から紡がれた恋の結末


プライベートの充実は仕事に直結する。

いつだったか伯父である会長が言っていたことがある。それには良き伴侶を見つけるのがなによりだと。そういった持論があるからこそ、これまでにも伯父は何度となく理仁に縁談を持ち込んでいた。

理仁はそれまでも仕事で手を抜いてきたつもりはなく、ミレーヌを背負って立つ人間として存分に力を発揮してきたが、伯父の言葉をまさに実感しているところである。

菜摘と入籍して一ヶ月。毎日の張りの度合いが以前とは格段に違う。
外資系高級ホテルへの次の出店が決まるなど仕事はさらに順調になり、妻という存在のありがたみを痛感していた。


「そういえば、山崎さんがフランスに戻られたそうですね」


毎朝のルーティンである予定の確認を終え、戸田が思い出したように言った。


「そうなのか」


一ヶ月前の社内コンテストでグランプリを逃したエリカは、理仁とのひと悶着もありミレーヌを退社。その後、当てつけのようにライバル店のパティシエになったと噂で聞いたが、そこも辞めたようだ。
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