政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
◇◇◇◇◇
「やっぱり家はいいなぁ」
そう言って茶の間で両足を投げ出したのは、退院してきたばかりの和夫である。
医師からようやく許可が下り、思いのほか長引いた入院生活から解放された和夫の顔は清々しい。
「じいちゃんが帰ってきて、俺もうれしいよ。ひとりはやっぱり寂しいからさ」
来年は社会人になる大地だが、菜摘も結婚して家を出たため心細さがあるのかもしれない。
「はい、どうぞ」
三人分のお茶を淹れた菜摘は、ケーキの入った小箱も手にしている。
「ミレーヌのケーキか?」
「そう。今日はダブルでお祝いがあるから。ね?」
首を傾けて大地と頷き合う。
「ダブル? ひとつは私の退院を祝ってくれるんだとして、もうひとつは?」