政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

これを作ったエリカはミレーヌを退職してフランスへ行ってしまったそうだ。理仁は深い訳は話してくれなかったが、郁子から聞いたところによると社内コンテストでの結果が振るわなかったのが原因だとか。

彼女との間には理仁とのことでちょっとしたいざこざがあったため、正直に言うと菜摘的にはホッとしている。理仁に好意を寄せている女性が近くにいるのは、やはりどうしても気になってしまうから。

いただきますと三人同時に口に入れ、揃って「おいしい!」とため息交じりの感想がこぼれる。エリカはちょっと苦手だったが、ケーキに罪はない。


「それとね、おじいちゃん、これは理仁さんからの提案なんだけど」


先にペロッと平らげた菜摘は、フォークを置いて和夫に真剣な顔を向けた。


「人の手を多くするのはどうかな。おじいちゃんの体も心配だし、これからファインベリーの出荷が始まったら、今よりもっと忙しくなると思うの」


一季成りと四季成り、両方を栽培していくのは相当な労力だ。


「だけど、誰が手伝ってくれる?」
< 297 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop