政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
負債の心配がなくなったとはいえ人を雇う余裕はないと言いたいのだろう。
「それがね」
菜摘が説明をしようとした矢先、玄関からチャイムの音が鳴り響く。
「誰だろう。私、見てくるね」
話をいったんストップして菜摘が玄関へ向かうと、そこにいたのは理仁だった。
「どうしたんですか?」
「どうしたもこうしたもないよ。おじい様が退院されたのに顔を出さないわけにはいかないからね」
理仁はお邪魔しますと上がり、茶の間へ向かう。和夫も大地も、理仁の登場には菜摘同様驚いていた。
菜摘が座っていた隣に正座し、理仁がにこやかに笑いかける。
「退院おめでとうございます」
「お忙しいでしょうに、ご丁寧にすみません」
「菜摘の大事なおじい様ですから。それとお話したいこともあったので」
「今ちょうどその話をしていたんです」