政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
あれが実でなかったらなんなのだと、さらに食いついてきた。
「雌しべの土台といったらいいでしょうか。茎のようなものなんです。専門用語では花托と呼ぶのですが」
「茎? あんな真っ赤な色して? へぇ、それは知らなかった」
感心したように何度もうなずく。
「茎が肥大化したもので、〝偽果〟と言われています」
「偽りの果実か。なるほどね」
「あ、ごめんなさい。つまらないですよね、こんな話」
我に返ってハッとする。
理仁が興味津々に見えたのは、ただ単に菜摘に合わせただけだろう。
「いや、とてもおもしろい話だった。それに……」
「それに?」
言葉を途中で止めた理仁に首を傾げて聞き返す。
「ほんわかしたキミが、イチゴの話になると途端に凛々しくなるのも興味深い」