政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
理仁には、ことごとく失態しか見せていないのは気のせいか。
農園では段差に躓きそうになり、パーティー会場ではウエイターにぶつかりそうになった。揚げ句の果てにはグラスを倒すなんて、どれだけ注意力が散漫なのか。
「キミは濡れてない?」
「はい、私は大丈夫です。ほんとにすみません」
理仁から濡れたナフキンを受け取ろうとしたが、彼は軽く首を振ってそれを近くのワゴンに置いた。
つくづくカッコ悪い。お世辞とはいえ、せっかく褒めてもらったのに帳消しだ。
ふぅと小さく息を吐き、椅子に座りなおす。
「菜摘さん」
そばに立っていた理仁が、不意にその場に跪き菜摘と目線を合わせる。
「日高さん……?」
「結婚しようか」
理仁が思いもよらない言葉を放った。
なにを言っているのか理解できず、目をまたたかせて彼を見つめ返す。