政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
男装して潜入したふたりの新居
時の流れとは無情なもので、一週間をあっという間に飲み込んでいこうとしている。
理仁が迎えにくるといっていた日を明日に控え、菜摘は高校時代からの親友である守屋郁子に会っていた。
出版社で働く彼女との待ち合わせは、会社近くのイタリアンレストラン。ランチをとりながら話すのは、もちろん菜摘の結婚についてである。
「ミレーヌといったら、都内で今一番注目されているパティスリーじゃない」
郁子は女性向けのファッション誌の編集を担当しているため、スイーツ関連にもとても詳しい。イチゴにしか興味のない菜摘と違い、幅広いアンテナでいろいろな流行りにも敏感だ。
サバサバとした性格とバイタリティあふれる言動で、高校時代から中心的人物。切れ長の一重瞼をした涼しげな美人で、ワンレンボブがよく似合う。
「たしか一年くらい前から、フランスで長年修業してきた女性がチーフパティシエとして腕を振るってるよ」
「そうなんだ。郁子、詳しいね」
「職業柄そうなるでしょ。しかもそこの社長っていったら、メディアでもちょくちょく取り上げられてるスイーツ王子でしょ」