政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
さすがは郁子。菜摘がミレーヌの名前を口に出しただけで、パティシエや社長の情報がポンポン出てくる。素早くスマートフォンで検索し、画面に理仁の顔写真を表示させた。
「やっぱイイ男」
うっとりするように言ってから、向かいに座る菜摘の方にスマートフォンを滑らせる。それは、にこやかな表情でマイクの前に立つ理仁の写真だった。
もしかしたら、菜摘も招待されたパーティーの際に撮影されたものかもしれない。そのときのスーツと似ていた。
「こんなハイスペックイケメンにプロポーズされたら、断る理由はないでしょ」
郁子には断る選択肢はないらしい。
「でも、おかしいと思うの」
「なにが?」
たらこのクリームパスタをくるくるとフォークに巻きつけながら、郁子が首を傾げる。
「うちの農園の借金を肩代わりする代わりに私と結婚したいなんて」
「菜摘を好きになったんでしょ?」