政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
「まさか」
どこをどうしたら好きになるというのか。彼の前で菜摘は失態ばかりだ。
「高校のときからそうだけど、菜摘は自覚がないんだよねー。ほんわかしてる無自覚の美人っていうのかな」
「……なんか傷つく」
「ごめん。言い方が悪かった」
素直に謝ってから郁子が続ける。
「あからさまに自信のある美人じゃないから脅威って言いたいの。高校のときからモテてたのに、男の子たちが立てる恋愛フラグに気づかず、ことごとくなぎ倒していったもんね」
「それじゃ、ただの鈍感な女じゃない」
菜摘が不服を言うと、郁子はアハハと軽い調子で笑った。
「でもさ、そろそろイチゴだけじゃなく恋愛にも目を向けた方がいいと思う」
これまで何度となく言われたセリフだ。それこそ耳にタコと言ってもいいだろう。