政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

そこまで言ってから今の自分は大地だと思い出す。


「姉から日高さんを案内したのは聞いています」


うっかり発した言葉との繋がりがなんとなく変でも、かまっている余裕はない。


「天井から散布できるのでかなり楽になり……なったようですね」


菜摘から顔を背けた理仁の肩が揺れたように見えた。


「……えっと、ではここはしばらくこのままにして実証ハウスに行きます」


そこには開発した四季成りイチゴ、ファインベリーがある。
空調の効いた小屋から出るとムワッとした空気に包まれ、その熱気で胸が焼きつきそうだ。汗がこめかみを流れていく。


「暑いね。脳天が太陽に焼かれそうだ」


きっと違うのだろうが、暗にウィッグのことを言われているようで気が気じゃない。理仁はポケットからハンカチを出して額に浮かんだ汗を拭った。
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