政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~

実証ハウスに入り、イチゴの生育状態を見る。


「ファインベリーはどう?」


葉っぱの間から赤い実がいくつも顔を出している。色味も大きさも十分。成熟しているようだ。


「ちょうど食べ頃ですね」


そのうちのひとつを摘まみ取り、理仁に差し出す。
理仁は「ありがとう」と受け取り、すぐに口に運んだ。


「うん、おいしいな。一季成りのものと遜色ない」


和夫はまさにそれを目指していたため、手伝っていた菜摘もそう言われてうれしくなる。


「品種改良はどのくらいの年数がかかるもの?」
「そうですね……ランナーで増やしつつ選抜していくので最低でも五~六年でしょうか」


それもうまくいくとは限らない。期待する味を出せるのはごく稀だ。
< 99 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop