政略結婚の甘い条件~お見合い婚のはずが、御曹司に溺愛を注がれました~
実証ハウスに入り、イチゴの生育状態を見る。
「ファインベリーはどう?」
葉っぱの間から赤い実がいくつも顔を出している。色味も大きさも十分。成熟しているようだ。
「ちょうど食べ頃ですね」
そのうちのひとつを摘まみ取り、理仁に差し出す。
理仁は「ありがとう」と受け取り、すぐに口に運んだ。
「うん、おいしいな。一季成りのものと遜色ない」
和夫はまさにそれを目指していたため、手伝っていた菜摘もそう言われてうれしくなる。
「品種改良はどのくらいの年数がかかるもの?」
「そうですね……ランナーで増やしつつ選抜していくので最低でも五~六年でしょうか」
それもうまくいくとは限らない。期待する味を出せるのはごく稀だ。