さよならプリズム
「モネ、お母さんが呼んでるよ」
コンコン、とノックがして異空間から飛び込んでくるのはいつだって大人じゃないアネがいい。
アネは私の双子の姉で、一卵性双生児でほとんど見分けの付かない私と写し鏡の姿をしている。
でも肌に私みたいなそばかすはなくて、同じ茶髪を三つ編みにしているのだけど、それは瓜二つなのに凛々しい眉や強い瞳は、私が強くなった見目をしている。
私はしょぼくれていて自分に自信がない情け無い顔をしてるから、眉はいつもハの字に垂れ下がっていて眼差しはきょろきょろと周りの目ばかりを気にしてた。
「モネ、お母さんが呼んでるよ」
コンコン、とノックがして異空間から飛び込んでくるのはいつだって大人じゃないアネがいい。
その音を合図に空いてるよとひっそりと伝えたら、アネはドアノブを回して鍵のかかっていない私の部屋、天蓋付きベッドのスリーピングカーテンを押し上げた。
「モネ、今日ハンバーグだって」
「アネ、それをわざわざ言いに来たの?」
私オムライスがよかったよと伝えたらアネはハンバーグがいいよと呟いた。双子であっても食の好みはちょっと違う。
三角座りを更にきゅっと丸めて縮こまったら、アネはあぐらをかいて私の三つ編みに手を出した。くるくるくる。癖っ毛の赤茶の毛先は私と同じそれなのに、なぜか自信に満ちたアネと私じゃ、癖毛の質が違う気がする。
「わかるよモネ、傷ついているんだね」
そして私に触れるとひとたび治療薬を唱えるアネは、私の心のお医者さん。