さよならプリズム
「アネ、私悲しいの」
膝小僧におでこを置いて俯いたら、なんだか子どもじみてる気がした。事実私たちは9歳で、それは大人と背比べをするにはまだまだ背伸びがいる年齢。
「モネ、何が悲しいの」
「私、私最低よ」
自分がいなくなるみたい、そう伝えたらアネはいなくならないでと二つ返事でいつも言う。いつもと言うのは、いつもの話で、私は心が弱かった。すぐに挫けてしまって、それがいつも柔く脆い。
「モネ、何が悲しいの」
「大切を傷つけてしまったわ」
大好きなひとやものと過ごした瞬間や過去は変わらない。笑顔でいて楽しかった。月並みな言葉で言うとその瞬間がずっと変わらないって思ったの。ここにあると思ったの。
「相手もそうだと思ったわ」
「きっと私は特別だった」
「彼女が私のそうであったように、彼女の特別もまた私であるべきだったのよ」
「いいえきっとそうだった」
儚くてひどく脆い。
「今じゃひっくり返ってしまった」
大好きと過ごした時間や瞬間は変えられない。変えられない過去も、もう今では出逢わなければ良かったと思うほど憎くて憎くて堪らない。輝き出したあの日の世界の入り口にもしもう一度戻れたら、私はそれでもきっと走って、今じゃ見向きもしてくれないあの子のもとに走るんだわ。
ただただ笑顔が見たかった。二人で笑っていたかった。
あの子の声が好きだった。本当に大切だったのよ。