紅に染まる〜Lies or truth〜



驚き過ぎて瞬きを忘れた




間近に見えるのは閉じられた瞼と黒くて長い睫毛

角度を変えて何度も重ねられる唇から伝わる熱も

どこか他人事のように見ていた


急に開いた紅太の瞳に
炎が揺らいだ気がして
動きを忘れたように視線が離せない


「愛、俺を思い出せ」


いつか聞いた言葉と同時に
また重ねられた唇

そして・・・

「好きだ」と微かに聞こえた甘い声を消すように

それが・・・

噛み付くような口付けに変わった


「・・・んんっ・・・ふ・・・」


息が・・・苦しい


逃げ道を塞ぐように
頭の後ろに置かれた手に

呼吸が苦しくなる

圧倒的な支配のような口付けは
歯列をなぞり奥深くに侵食する


初めての大人のキスに翻弄され
頭の中がボウと澱む

その間にも否応無しに絡められる熱は
五感を掻き乱すように蠢いて

それに応えているのか
流されているだけなのか
考えられない熱に浮かされ

耳から入る水音に嬲られ
紅太の胸元を掴んだ手に力が入った


「・・・っ!ハァ、ハァ」


漸く離れた唇から一気に酸素が流れ込み
肩が上下に揺れる


「初めて・・・か」


嬉しそうに綻ぶ顔を見ると
再び視線が交わった


「その目に俺だけ写してろ」


頬を包むように置かれた手と
顎にそっと添えられた手が動いて



また唇が重なった







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