紅に染まる〜Lies or truth〜

強引に奪われたキスのことを
許したつもりはない

それに

モニターに映し出された映像で
涙を流した日を境に

この人を見ても感情が揺れなくなった

それなのに


「ほら、今度はちゃんと受け止めてやるから」


・・・今度は?ちゃんと?


僅かに残るデジャヴ的な映像も
紅太に繋がるかどうかも確かじゃなくて


・・・思い出せって言ってたよね


・・・‘愛’って親しげだった


最近の記憶を合わせても
自分の記憶を思い出して欲しそうだった


「ここで会ったの?」


「あぁ」


「降りてきたら話してやる」


両手を広げたままの紅太に向かって
ゆっくりジャンプした


「キャァァァァァ」


「あぶねー」


受け止めてくれるはずの紅太は
私を受け止めた後尻餅をついた

全く痛くないけれど
不恰好な紅太を見て堪えきれずに吹き出した


「ハハハ、ウケる」


男のくせに・・・とか
筋肉質に見える身体は肉襦袢か・・・とか

ひとしきり煽りながら笑った


「テメェ」


「キャッ」


強い力で羽交い締めにされると
景色が反転した


「・・・ッ!」


「どうした?」


背中に芝生の感触がして
直ぐ目の前には余裕な笑みを浮かべた紅太の顔


・・・白昼堂々と押し倒されてる


身体を跨がれた上
ガッチリと押さえつけられた手首は
ちょっと身を捩ったほどではビクともしない


「ちょ、退いてよ」


「嫌だって言ったら?」


「ぶっ潰す」


「女の子が物騒な言葉使うんじゃねぇ」


「は?」


< 138 / 227 >

この作品をシェア

pagetop