紅に染まる〜Lies or truth〜


「女の子の口は愛でるためにあるの」


「は?」


なにを言ってるんだと
呆れた口を塞がれる


「んっ・・・!」


嫌だ・・・嫌だ

簡単に奪われた唇に
悔しくて涙が溢れる

力が入ったままの手首と
抜け出そうと足掻き続ける脚に

重ねられた唇が離れた



「・・・んだよ、そんなに嫌か」



変化に気づく紅太の表情が曇った


自分でも気持ちの変化を試していたのかもしれない


「太腿の裏側に縫い傷あるだろ?」


「うん」


「あれ、俺の所為だ」


「?」


「いつも一平さんが連れてくる女の子が可愛くて欲しくなった・・・簡単に懐こうとしたから手を広げたのに俺の力が弱すぎて怪我させてしまって・・・」


そんな小さな頃のこと・・・
思い出しながら傷付いた顔をする紅太


「一平さんにも『強くなったら考えてやる』って言われたのに・・・俺は今でも愛を前にすると弱ぇ」


「・・・」


「愛が強いのは知ってるから解けない場所しか押さえてねぇつもりが、やっぱり手の中には落ちねぇ」


「・・・」


「・・・俺は愛が欲しい」


拗ねた子供みたいな言葉の後に
ストレートに想いを告げてくる


「フッ」


そんな紅太が無性に笑えてきて
本当は文句の一つも言いたかったけど


「アンタじゃ私は手に負えない」


気持ちよく切り捨てる


「・・・かもな」


「うん」


「南の奴ら・・・良い動きしてる」


「そうね」


直ぐに仕事の話に切り替えられる

もしかしたら

少し傾くかと期待した自分の気持ちは
案外頑なで一途なものなのかもしれないと思った





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