紅に染まる〜Lies or truth〜
「髪型の話・・・」
そう切り出した兄は
私の長い髪を手櫛で梳かしながら
「愛と同じ髪型を見るとつい目がいってしまって」
バツの悪そうな顔をした
大方それを夜の女達が勘違いしただけだろう
それほどまでに想ってくれていることを知って
なんだか肩の力が抜けた
「帰るか?」
「うん」
片方だけ繋いだ手はそのまま
運転する兄を見つめる
何度もこちらを見て
「ん?」
と微笑む様子を見ながら
どんどん重くなる瞼に逆らえず
意識を手放した
。
目を覚ますと
自分の寝室のベッドに寝ていることに少し驚いて
それより
手足を動かせない程にガッチリとホールドされた状態に
原因である兄に声をかけた
「一平」
「・・・ん」
「起きて」
「・・・やだ」
「は?」
喉も渇いたしトイレにも行きたいし・・・
それらを頭に思い浮かべただけで身体に自制が効かなくなる
少し身体を捩ると
僅かに出来た窪みに拳を入れた
「・・・ヴッ」
鳩尾クリンヒットで拘束が解かれた隙に
ベッドから降りると寝室を出た
トイレを済ませてリビングへ入ると
水を注いだグラスを持った兄が立っていた
それを受け取ると
「痛い?」
間近で兄を見上げる
僅かに視線を逸らした兄は
「・・・いや、問題ねぇ」
少しの間は痛みと葛藤したであろう様子を物語っていて
それを横目に見ながらソファに座った