紅に染まる〜Lies or truth〜


隣に座って腰を引き寄せる兄

兄・・・ではないか


一平の肩に頭を寄せると
クスッと笑った


「まだ眠いか」


「全然」


口を尖らせる私の手からグラスを受け取るとテーブルへ置いた


「愛?」


「ん?」


「これからのこと」



そう言いながら
私を膝の上にサッと横抱きにした


・・・近い


柔らかく微笑む一平は
色気がダダ漏れで
視線を合わせることに勇気がいる

それなのに


「愛?」


間近で呼びかけるから
必然的に絡む

蕩けそうな笑みを浮かべた口から


「愛は俺のマンションへ引越しな」


衝撃的な一言が聞こえた


「え?」


私はニノ組を襲名したばかり
ここから出ると言うことは
仕事を投げ出すってこと

そんなの許されるはずない・・・

生まれてきた瞬間から
道は決まっていた・・・はずの


私の呪縛を


解くというのだろうか?


途端に鈍くなる思考回路が
一平の言葉を探る力を弱める


「ここは田嶋の要塞で親父のもの、だから・・・愛をここから出す」


「田嶋の姫は終わり」


‘だから’と繋いだ一平は


「愛は俺に守られる姫になればいい」


そう言うと私の首元に顔を埋めた


「私が辞めて困らない?」


「あぁ」


「襲名してすぐなのに?」


「あぁ」


「情勢が動いたら?」


「そんなことで潰れる龍神会じゃねぇ」


「・・・」


「愛を、自由にしてやりてぇ」


「・・・っ」


また少し震える一平の身体に
しがみつくように手を回した



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