紅に染まる〜Lies or truth〜


「ククク」


長々と主従の話をされても困る
だから・・・
笑って誤魔化すことにした


「余裕ないのね」


「もしかしたら内部抗争になるかもしれないんだぞ?余裕なんてねぇ」


「ふーん」


「愛?」


今度は不安そうな声で呼ぶ


「私の力を見くびってんのなら帰って抗争の準備すれば?」


持っていた箸をテーブルに叩きつけて立ち上がった


「チッ」


苛々する気分が舌打ちに乗っかり
目の前に座る兄と側で控える天井さんが固まった


「これから冬休み返上で大澤のために仕事部屋に籠ることになるだろうから、終わるまで顔見せんな一平」


「愛?」


「破ったら大澤ごと、西の街をぶっ潰す」



ゴクンと兄が生唾を飲む音が聞こえた



これほどまでに兄を拒絶したことはない

私の怒りの大きさに気づいた兄は
静かに頭を下げた


「すまない、愛」


「薄っぺらい」


「・・・」


「陰を押し付けて謝れば許されると思ってりゃ幸せよね」


これ以上ない嫌味を吐き出すと
兄を置き去りにして部屋に戻った


「チッ」


不自由な自分

それを飲み込めるだけの
力のことを
実は自慢に思っている

それだけに

命令されて動くことに
反発を覚えるのも事実


「17歳に主従なんて理解できるもんかっ」


誰に聞かせる訳でもない声は
要塞の壁に吸い込まれて消えた




















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