私は、この人の妻?
···美穂 side
美穂·····
穂乃華のご主人のおばあ様の
お通夜にも葬儀にも参列した。
初めてみる穂乃華のご主人は、
たった一人の肉親を亡くし
憔悴仕切っていて
挨拶もろくに出来ずに
穂乃華と穂乃華のおばあ様が
参列者の対応をしていた。
穂乃華は、9ヶ月のお腹を抱えながら
懸命に動いていた。
そんな穂乃華が心配になり
声をかけたが
「大丈夫ですよ。」
と、言うだけだった。
長居をしても迷惑になると
その場は去った。
数時間後に
穂乃華から、電話がかかってきた。
「穂乃華、大丈夫?
お通夜も葬儀も沢山の人だったね。
疲れたんじゃないの?」
「·············」
「ん?穂乃華?」
「·····み····ほっ···せん···せいっ····」
「ほのか?穂乃華?どうしたの?」
「うっ····っ·····っ·····」
「どうしたの?てか、どこ?」
「····そう···ぎ····」
「そこにいなさい。」
尋常じゃない穂乃華に
そこにいるように
言って直ぐに車に乗り込む。
寒い中、穂乃華が心配になる。
車を温めて置く
葬儀場の正面玄関に着くが居ない
裏に回ると下を向いて立っている
穂乃華がいた。
穂乃華の横に車を止めて
「乗って!」
と、言うと
穂乃華は、やっと動いて乗ってきた。
私は、穂乃華を自分の家に
連れて帰った。
泣くばかりの穂乃華を
部屋に上げて抱き締め
ソファーに座らせ
温かいミルクを飲ませた。
その間に
穂乃華の携帯を使い
おばあ様にだけ
『穂乃華は、私といます。
ご心配しないで下さい。』
と、自分は保育園で親しい
安藤 美穂だと入れて
電源を落とした。
私は、穂乃華が落ち着くまで
待って話を聞いた。
穂乃華は、泣きながら
詰まりながら話してくれた。
驚いた。
その言葉しかなかった。
だが、穂乃華をこんな目にあわせた事は
許されない。
穂乃華は、
「この事は、誰にも話さないで
下さい。
知れば、佳寿ちゃんも
おばあ様も両親も苦しみます。
私は、一人で生きて行きます。
いや、この子と。」
と、言った。
「良いの?穂乃華、それで。」
と、訊ねると
「はい。」
と、私の目を見て答える穂乃華に
私の両親がいる福井に行くように
言った。
私は、直ぐに両親に連絡をして
穂乃華の事を頼んだ。
両親は、私が穂乃華の事を
可愛がっているとわかり
一も二もなく了承してくれた。
明日、保育園を休んで
私は、穂乃華を実家に連れて行く。
必要な物は買い揃える。
葬儀の間に何かあっては行けないと
おばあ様から出産の
準備品と財布は常にそばに
置いて置きなさいと言われて
いたから、持ち歩いていた。
それだけでも助かった。