私は、この人の妻？

１１話

···海斗 side

俺は、会社に復帰した。

お通夜や葬儀にきてくれた
皆には、改めてお礼を言った。
殆ど記憶は、ないが·····

社員の中には、
「佐山課長の奥様が
あんなに綺麗な方とは
思いませんでした。」
とか
「赤ちゃん、もうすぐですか？」
とか
言われたが、海斗は誰の事を
言っているのかわからなかった。

落合のおばあ様や
お義父さん、お義母さんが
わかるのに、嫁の顔は
思い出そうとしても
真っ白で、何も思い出すことが
できずにいたから
曖昧に返事をしていた。

海斗の離婚は、一部の上司と
総務の陸人のみが知っていて
処理をした。

海斗は、マンションを引き払っていたから
おばあ様の家で暮らしている。

確かに誰かと暮らす予定の
作りになっていた。

陸人も一緒に片付けに来てくれたが
おばあ様の部屋も綺麗にしてあり
俺達？の暮らす部屋も
綺麗にされていて荷物は海斗の物
以外は何もなかった。

陸人は、おかしいと思った。

あまりにも綺麗で
嫁の物や赤ん坊の物がなく
嫁だった女を通夜や葬儀の時は
見ていた·····

なのに······。

だが、海斗は何もわからないようで
「陸人、ここで一緒に暮らすか？」
と、言うから
「ここは、海斗とおばあ様の
思い出の家だろ？
だから、止めとくよ。」
と、言った。

どこかしこに、嫁の思いが
垣間見れるリフォームに
なっている部屋で
暮らす気持ちには、ならなかった。

仕事も順調に動き始めると
海斗は、再び陸人が抱けるようになった。

二人は、元の恋人同士に戻ったように
過ごした。

平日は、なるべく
おばあ様の家に帰り
飲み会や接待、休みの日は、
陸人のマンションに泊まる。

おばあ様の喪があけて
飲み会があり
飲んで陸人のマンションへと戻る。

二人でシャワーを浴びて
ベッドに入りクライマックスのとき
「ほ···のか···たまら···ない···」
と、海斗が言った。

「かい···と···？」
と、言うと
「りっ···く······」
と、言う。

ただの聞き間違えか？
と、陸人は思ったが·····

飲んで帰った日
接待等で飲んだ日は必ず

海斗は　«　ほのか　»　の名前を呼ぶ
«　ほのか　»、気持ちよい····
«　ほのか　»、あしてる····
必ず、«　ほのか　»·····と。

だが、それ以外はない。
家で晩酌したぐらいではない。

陸人は、海斗を愛しているが····
海斗の心には、あの女がいるのでは
と、不信に思うようになっていった。