10年前の君とビターな恋を
そうか。これは夢だ。悪い夢を見ているのだ。昨日は色々ありすぎた。その影響で、頭が混乱して、高校時代の夢を見ているのだ。そうに違いない。そう思い、ベットに潜り込もうとしたその時...、
「パチーン!!!!!!」
と、大きな音が部屋中に響き渡ると同時に、背中にとてつもない痛みを感じた。
「おい、...姉貴。何寝ようとしてんだよ?早く起きないと怒られるの俺なんだけど。」
痛みに耐えながら、声のした方に目を向けると、そこには弟の結生(ゆうき)の姿があった。開いた口が塞がらないとはこの事なのだろう。背中の激痛に、夢でないと察した私は、口を一定の大きさでパクパクとさせ、誰が見てもアホだと言うであろう、顔になってしまった。そんな顔をよそに、結生は
「そんな金魚みたいな顔してないで、早く降りてこいよ。...もう寝るなよ?」
と最後に釘を指し、私の部屋を後にした。


信じられない。何が起きているのか、頭の整理がつくのにもう少し時間を要さなければならないが、もし夢ではないとして、もしこのままもう一度眠りにつこうとすれば、結生のグーパンがまた飛んでくるかもしれない。1つ下の弟は、最近会った男らしい体型とは違い、中学生の頃の伸び盛りの背丈と肩幅であった。だがしっかり男性として成長しつつある握力に、少ししんみりしつつも、あの痛みはもう二度と味わいたくない。そう思い私は、1度自分の身に何が起きているのか考えるのをやめ、リビングに足を運ぶことにした。

< 13 / 13 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

公開作品はありません

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop