カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
プロローグ
「優子、結婚おめでとう」
「ありがとう、桃。あなたの結婚式にはぜひ呼んでね」
一月某日、都内の神社での神前式。
白無垢姿で花婿と見つめ合う親友が、とても眩しく見える。にこりとした彼女に、ぎこちなく頬を緩めて頷いた。
二十六歳の私、天沢 桃(あまさわ もも)は、将来の結婚に向けて、そろそろ旦那候補と出会っておきたい年頃だ。
同い年で親友の優子も、就職を機に出会った彼と四年付き合ってゴールインをした。
きっと、誰かの隣で幸せそうな顔をする自分がリアルに想像できないのは、少なからず家柄を足かせに感じているからだろう。
私の生まれた天沢家は、江戸時代から両替商を開業して日本経済を動かしてきた大財閥だ。
現在は銀行や車、電子機器まで手広く事業を展開し、様々な企業と業務提携を行なっている。
特に両親は家柄をたいへん重視していて、友人関係についても口うるさく言われてきた。現に、高校時代からの親友である優子も漣(さざなみ)ホールディングスの一人娘だ。
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