カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
遊ばれているのかと思ったが、机の上に置いた鏡台に映る自分の髪型がどんどん整えられていくのを見て、つい感嘆の声を上げる。
「すごいです。手先も器用なんですね」
「美澄屋の店舗に併設された写真館に仕事で行ったときに、成人式の前撮りを担当するスタッフから教えてもらったんだ。女性の髪でやるのは初めてだよ」
机の上に置いてあったヘアピンやゴムで綺麗に留めた千里さんは、数分後に私の肩に手を置いて鏡を覗き込んだ。
「はい、できた」
あっという間に仕上げられて目を輝かせると、結われた髪に薄い桃色のかんざしが刺してあるのが見える。
いつのまに?全然気がつかなかった。
花から垂れる金の飾りが動くたびに小さく揺れ、とても可愛らしい。
「気に入ってくれた?」
「はい、とても綺麗です。あの、これは?」
「ご褒美だよ。今朝、言ったでしょう?」
『茶会が無事に終わったら、ご褒美をあげる』
ホテルでのセリフが頭をよぎった。茶会の着物を用意したときに、買っておいてくれたらしい。
この花も、色も、私に似合うと思って選んでくれたんだ。