カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
駅のホームに立つと、和装の私たちは目立つようで、ちらちらと視線を感じる。
こうしていると、ちゃんと夫婦に見えているのかな。
繋いだ手を離そうとしない彼は、目的地に着くまでこのままでいるつもりらしい。
ちゃんとしたデートは夜からだと分かっていても、気分が浮かれて仕方がなかった。
やがて、電車に揺られること三十分。都内の駅に降り立ち、ロータリーでタクシーを捕まえた。
そして目的地に着いた瞬間、目が輝く。
目の前に見えたのは、老舗の風格が漂う有名茶商ののれんだ。
静かで落ち着いた雰囲気の店内は和モダンな空間で、開放感のあるテラス席は日除けの赤い傘が印象的だった。
「千里さん、ここって」
「桃と話していた和カフェだよ。今日はプレオープンの最終日で、店主に招待されたんだ」
一歩足を踏み入れると、あずきの匂いがふわりと香る。
和のテーマを大切にしながらも現代的でおしゃれな座席を眺め、期待と興奮でワクワクした。