カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
たしかに、千里さんとは優子の結婚式会場で初めて会った。
未婚の証である振袖を着ていた私は、家柄もそれなりで、ちょうどいい身代わりだったのかもしれない。
美澄屋が経営を安定させるために、我が天沢財閥の融資を受けたいばかりに政略結婚を申し込んできたのかと思っていたのに、実はそんな裏があったなんて。
それでも、すべてを信じきれなかった。
私が共に過ごしてきた千里さんは、初めはこちらを翻弄してばかりの危険な男だった。でも、真面目で気づかいのできる彼は本気で私を大切にしてくれている。
どうしても演技だったとは思えない。
すると、私の心情を察したのか、美冬さんは不敵に口角を上げる。
「認められないのもわかるわ。でも、これは現実なの。証拠だってあるんだから」
「証拠?」
差し出されたのは、スマートフォンの画面だった。
情のこもった文面でのやりとりを見せつけられるのかと思ったが、そこに映し出されていたのは予想以上のものだ。