カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
やや乱れた着物姿でベッドに横たわるシルエットは、紛れもなく千里さんである。
それは昨晩身にまとっていた着物と全く同じ。深い眠りについているようで、その瞳は閉じていた。
ホテルの一室だと思われる光景には見覚えがある。高級なマットレスとほの暗い照明は、会員制のVIPバーの入っているオフィスビルのホテルだ。
それは、私がセンリさんの正体を知らずに一線を越えた部屋と同じ。
怒りとも悲しみともつかない複雑な感情が込み上げる。
「昨日は千里を帰せなくてごめんなさいね。バーで飲むだけの予定だったんだけど、盛り上がっちゃって」
「やめてください。……聞きたくありません」
自分でも驚くほど声が低かった。
信じたくないのに、こんな写真を出されたら何も言えなくなる。
昨晩帰ってこなかったのは、美冬さんといたから?このふたりは、本当に?
想像もしていなかった話を告げられて、混乱で頭が真っ白になった。
「まだ籍は入れてないんでしょう?このまま結婚をしても幸せになれないと思うわ。千里も、あなたも」