カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~


 一文だけしたためて、送信ボタンを押す。

 返事はすぐに返ってきた。


 『今週の土曜日、十三時にウチの庭園に来てくださるかしら』


 仕事を気づかって、日時を設定したらしい。

 庭園は、染森家の主催した茶会の場所だ。敵の本拠地に乗り込むような気がして、ぶるりと震える。

 昼間の冷たい視線を目の前にすると思うと、とても怖い。対面してなにも言えなかったらどうしよう。

 不安がよぎるが、モヤを振り払うように頭を切り替えた。

 避けて通ることはできない。

 承諾の返信をした後、息を吐いた。気持ちを落ち着かせて、彼に声をかける。


「ありがとうございます。お待たせしてしまってすみません。せっかく作ってもらったご飯が冷める前に、いただきましょうか」


 しかし、茶の間に向かおうとした私を制したのは、力強い腕だった。

 にこりとした表情からは察せられないが、逃がさないといった雰囲気が漂っている。

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