カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「まさか、話がこれだけだとは言わないよね」
「えっと……」
「もしかして、気をつかっているの?」
腰を抱き寄せられ、至近距離で切れ長の目と視線が合った。
「無理には聞かないけど、俺に言いたいことがあるならなんでも言って。自分の妻が目を赤くして帰ってきて、放っておけるわけがない」
メイクでうまく誤魔化したはずなのに、泣いてしまったと気づかれている。
悩みの原因が自分だと知ったら、なんて返してくれるんだろう。
こちらを見つめる瞳はとても真剣で、なにを言っても受け止めるという意思を感じる。
嘘をつくとも思えなかった。
美冬さんから聞いた話が真実だとしても、包み隠さず伝えてくれるはずだ。
うやむやにしないで聞いてくれて、嬉しい。
そうだ。大事なのは、千里さんと向き合うこと。
これは、ふたりの問題なのだから。
「実はーー……」
千里さんに導かれるまま畳に並んで腰を下ろし、躊躇しながらも口を開いた。