カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
水気が飛んで、彼の指から長い髪が背中に流れる。
ドライヤーの電源を切って棚にしまった彼は、隣に腰を下ろして、私の輪郭に触れる髪の毛を軽くすくう。
長い指でもてあそばれ、距離が近くて落ち着かない。
「髪を触るのが好きなんですか」
「髪というより、桃が好き。好きな子の髪には触れたくなる」
もしかして、デートの前日に髪を乾かしてくれたときからそう思っていたの?
ふいうちのセリフに体が熱くなる。
我慢しなくていいと伝えた途端、心の声を包み隠さず伝えてくるから心臓に悪い。
髪に触れていた手が、そっと頬に添えられた。温かくて骨張った手の感触にドキドキする。
甘い予感に目を閉じると、唇が重なった。
キスの余韻に包まれながらまぶたを上げると、柔らかくも熱っぽい瞳と目があう。
気づけば、軽々と横抱きにされて自室に運ばれていた。優しく横たえられたのが彼の布団の上だと理解して鼓動が速まる。
照明が落とされて、ゆっくりと組み敷かれたとき、目の前で形の良い唇が弧を描いた。
「緊張してる?」
「は、はい」
「素直だね。可愛い。大丈夫だよ」