カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
自然に口付けられる。
それは想像よりもずっと優しくて、大切にされているのがひしひしと伝わってくるキスだ。頭を撫でる手に抱き込まれて、彼の香りに包まれた。
「んっ……」
小さく漏れる声が恥ずかしい。
和服は肌の露出が少ないと思っていたのに、帯を解かれると一気に重ねていた布がはだけて緊張感が高まった。
いつも隙なくきちんと着こなしているだけに、目の前の彼の乱れた襟から筋肉質な胸板がのぞいているのが、よけいに色っぽく見える。
キスの合間に胸元に手が差し入れられ、肩を撫でられる。
ぞくりと甘い痺れが走った。
「こんな簡単に脱げちゃうんだ、って思った?」
心の声を言い当てられて、頬が熱くなる。
耳、首筋、鎖骨と唇が降りていくたびに、体の芯が震えた。力が抜けて、うっとりするほどの快楽に身を任せるしかできない。
あの夜と同じだ。
紳士の仮面を外して、危険な本能が顔を出す。こちらを見つめる目にはたしかな熱と欲情が宿っていて、視線を合わせるだけでくらくらした。
抱きしめあって触れた肌から体温が交わっていく。
呼吸の仕方がわからなくなるほどドキドキして、思考がうまく働かないけれど、大好きな人の腕の中にいるだけで満たされて幸せな気持ちになれる。