カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「そういえば、桃さん。今日は、送った袷を着てくださったんですね。とてもよくお似合いです」
柔らかい口調ながらも感情の読めない声が聞こえ、心に若干のモヤを感じて振り向いた。
目の前の彼は、今までとどこか雰囲気が違う。
「えぇ。せっかく贈ってくださったものですし、とても素敵な着物でしたから」
「気に入ってくれたのなら良かった。赤は、桃さんの白い肌によく合うと思ったんです。細身で華奢なあなたは、やはり和装が似合う」
どこか引っかかる言い方だ。採寸で細かい体型までもわかるのか?
数値としてある程度把握できるのだろうが、着物の色も、写真からわかる肌のトーンだけでピタリと似合うものを当てがうのは難しいだろう。
成人式の振袖のように、実際に着てみて印象が変わることもある。
「すごいですね。少ない情報でこんなにも正確に私をイメージしてくださるなんて」
「いや、さすがに想像だけでここまで君に似合うものは贈れませんよ」