カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
「ねえ、桃。今日の招待客は、みんなウチや旦那の知り合いだから、桃のご両親のお眼鏡にかなう方ばかりよ。気になる人がいれば声をかけてみたら?」
優子が小さく耳打ちした。
彼女の旦那さんも大手不動産を経営しているようで、会社の方や付き合いのある家のゲストを呼んだらしい。
たしかに、見回してみると招待客はみな高そうな訪問着を身にまとっている。光沢や繊細な柄から質の良いものであるとひと目で分かった。
「私から声をかけるなんて無理だよ。知らない男の人と会話が持つ気がしないし、それに、狙っていると思われても恥ずかしい」
「桃は奥手だもんね。でも、自由に恋愛できなかった弊害があるとはいえ、せっかくの機会だし、いい出会いがあって欲しいな。桃には幸せになってもらいたいもの」
優子は、天沢家の厳しい条件に見合うゲストばかりが集められたこの場所は、絶好の婚活場だと言いたいようだ。