カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
前髪をかき上げた手で、くいっとあごを持ち上げられた。
「周りに無理やり決められた人なんて、心から愛することはできない……だっけ?」
酔った勢いでこぼした愚痴を、本人に伝えていたのだと察して全身の血の気が引く。
ポーカーフェイスで相槌を打つ間、どんな気持ちで聞いていたのだろう。
「上等だよ。政略結婚なんて期待していなかったけど、気が変わった。君みたいに素直でウブな子は好みなんだ」
それは、つまり“からかいがいがある”という意味か?弄ばれている気分になって、眉を寄せる。
「私は、簡単に嘘をついて女性を誘惑する軽い男の人は嫌いです」
「ふふ、言うね。心外だな。軽い男じゃないよ。妻になる桃ちゃんだったから声をかけて、君にそそられたからホテルに連れて行っただけ。けっこういい夫婦になれると思うけど。相性も良かったでしょう?」
「あ、い……」