カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
畳には多くの紙が置いてあり、そのすべてに美術工芸品の絵が描かれている。
「ごめん、起こした?」
少しかすれた甘い声が耳に届く。
体を起こした彼は「あー、少し寝落ちた」と前髪をかきあげた。
「いえ、自然に目が覚めたんです。すみません、勝手に入って……もしかして、お仕事をしていたんですか?」
「仕事ってほどじゃないよ。今度“和カフェ”の事業と提携するんだけど、制服とか店のイメージを膨らませていただけ」
「和カフェ、ですか?」
「そう。甘味処を主に、ランチメニューも豊富な和風カフェを夏季限定でオープンするんだ」
すごい。本当に色々な取り組みをしているんだな。
それにしても、仕事じゃないと言いながら、パソコンには長時間打ち込んだであろう量の文字が並んでいるし、畳には多くの資料が広げられている。
「眠くありませんか?急ぎでないのなら、そろそろお休みになったほうが……お疲れですよね?」
「いや、大丈夫だよ。ありがとうね」