カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
少しはぐらかされた気がする。素直に休むつもりはないようだ。
こちらに背を向けて再びパソコンを打ち始めた彼に、小さく息を吐く。
「あの、お水をいただいてきても良いですか」
「うん。なんでも好きに飲んでいいよ。寝る前に案内したけど、場所覚えてる?」
「はい。ありがとうございます」
和室を出て、台所へ向かった。
カップをひとつ借りて棚を見ると、ボトルのコーヒーはだいぶ量が減っており、買い置きも多い。よく好んで飲んでいるようだ。
そっと注いで牛乳を混ぜる。わかりやすいところにストックされていたシュガーを入れて、部屋を出た。
「千里さん」
パソコンに向かっていた彼に差し出すと、切れ長の目が見開かれた。
「すみません、私の家じゃないのに。カップもお借りしました」
「いや、いいんだ。でも、どうして?さっきはもう寝たほうがいいって言っていたのに」
「千里さんは作業をしていたいんだと思ったので、明日はお休みですし、どうせなら止めるよりも眠くならないほうがいいかなって」