カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
冷蔵庫を見ると、家政婦さんが作り置きしてくれたらしいおかずと、いくつかの食材があった。
タッパーの中は煮物か。お米は炊いたものをラップで小分けにしてあるみたいだから、鮭を焼いてお味噌汁を作ろうかな。
棚に綺麗にしまわれていた調理器具の配置を頭に入れながら、朝食づくりに取りかかる。
やがて、ふたり分の盛り付けが終わり、小皿で味噌汁の味見をしていたときだった。
「おはよう」
「ひゃっ」
肩に軽くあごを乗せられた。後ろから腰に腕を絡めたのは千里さんだ。
突然スキンシップをとってくるので、油断ならない。
「おはようございます。すみません、食材や台所のものを使わせていただきました」
「ううん、嬉しいよ。ありがとう。朝食を作ってくれる君を見て、にやけちゃった。こうしていると、本当に俺の妻みたいだね」
「妻……ですよ?」
「はは、そうだった」