カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
若旦那の危険な誘惑
「お母さん、今なんて?」
「さっきから何度も言っているでしょう、桃。あなたのお見合いが決まったの」
優子の結婚式から一週間が経った頃、突然突きつけられた話に愕然としていた。見合い話なんて、寝耳に水だ。
「お相手は老舗呉服店、美澄屋(みすみや)の跡取り息子よ。こんな絶好の機会はないわ」
「まさか、受けたの?」
「当然じゃない。お父さん達も喜んでいたわ。こんなに優良な相手は他にいないって」
信じられない。私の了承を得る前に、勝手に話が進んでいたなんて。
美澄屋は和服にあまり馴染みがない私でも聞いたことがある。
大正十年創業の老舗呉服店で、都心の一等地に本店を構え、今では全国展開をして多くのデパートにテナントを出している大手だ。
名の知れた家の跡取り息子は、まさに両親らが待ち望んだ逸材である。
だが、顔も知らない男性と見合いをさせられるなんて、なんとも受け入れ難い話だ。