カラダから始まる政略結婚~一夜限りのはずが、若旦那と夫婦の契りを交わしました~
毒蛇は牙を剥く
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「じゃあ、浴衣の在庫が確保できそうなんですか」

「あぁ。無事にオープン初日を迎えられそうだよ」


 茶会から帰った夜、入浴を終えて髪を乾かしていると、部屋を訪ねてきた千里さんがほっとした顔で言った。

 月見フェアという展示会に出す着物の発注を優先的に契約することを担保に、納期を早める話がついたらしい。

 敷居が高いイメージの美澄屋が、和カフェとコラボをして安価なレンタル事業を始めれば、新たな客層を取り込むことができるだろう。


「桃も、茶会お疲れさま。作法も完璧だったんだって?美冬から聞いたよ」

「あ、本当ですか?嬉しいです。会場で美冬さんとお話ししたとき、着物をとても褒めてくださいましたよ」


 つきっきりのレッスンをしたおかげで、茶会は問題なく進められた。美澄家と繋がりがある招待客は向こうから話しかけてくれたし、挨拶も及第点だ。

 美冬さんとは少ししか交流できなかったが、千里さんに報告をしてくれたらしい。

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