真夜中だけの、秘密のキス
椿の姫の任期は、次回の選挙で落選するまで。

前期と後期で分かれるわけではなく、長く続けることもあるみたい。


だから私が、久木君の彼女や友達以上の関係になれることは、まずない。

あるとしたら、一学上の椿の姫が卒業したとき。

まだ一年以上もあるから絶望的だ。





下校の時間になり、廊下を歩いていたら、向かいから背の高い人が近づいてきた。


あ。久木君……。

一瞬だけ目が合ったのに、思わず自分から視線をそらしてしまった。


だって。もう、手の届かない人。

椿の姫のモノだから。


「──玲香」


すれ違いざま低く声をかけられ、ドキッとしつつ足を止める。


昔みたいに下の名前で呼ぶなんて。

お願いだから、期待させないで。

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