真夜中だけの、秘密のキス
椿の姫の任期は、次回の選挙で落選するまで。
前期と後期で分かれるわけではなく、長く続けることもあるみたい。
だから私が、久木君の彼女や友達以上の関係になれることは、まずない。
あるとしたら、一学上の椿の姫が卒業したとき。
まだ一年以上もあるから絶望的だ。
*
下校の時間になり、廊下を歩いていたら、向かいから背の高い人が近づいてきた。
あ。久木君……。
一瞬だけ目が合ったのに、思わず自分から視線をそらしてしまった。
だって。もう、手の届かない人。
椿の姫のモノだから。
「──玲香」
すれ違いざま低く声をかけられ、ドキッとしつつ足を止める。
昔みたいに下の名前で呼ぶなんて。
お願いだから、期待させないで。
前期と後期で分かれるわけではなく、長く続けることもあるみたい。
だから私が、久木君の彼女や友達以上の関係になれることは、まずない。
あるとしたら、一学上の椿の姫が卒業したとき。
まだ一年以上もあるから絶望的だ。
*
下校の時間になり、廊下を歩いていたら、向かいから背の高い人が近づいてきた。
あ。久木君……。
一瞬だけ目が合ったのに、思わず自分から視線をそらしてしまった。
だって。もう、手の届かない人。
椿の姫のモノだから。
「──玲香」
すれ違いざま低く声をかけられ、ドキッとしつつ足を止める。
昔みたいに下の名前で呼ぶなんて。
お願いだから、期待させないで。