真夜中だけの、秘密のキス

ロビーで久木君と別れてから、おかしなことが起こった。


まず、いつもは空っぽの私の靴箱に、大量の手紙が入っていた。


全部、私宛。

隣の子と間違ったわけではないみたい。

一体、どんな内容が書いてあるんだろう。


いそいそと鞄にしまい込んだあと、さらに。


「赤西さん。ちょっといいかな?」


緊張ぎみの男子に立て続けに声をかけられた。

それらはすべて、連絡先の交換を求めるもの。


「私でよければ……」と女の子と接するときのように気軽に教えてしまった。

パッと顔を輝かせ、校舎へ戻っていく男子たち。


そして、さらには。


「玲香ちゃん。一緒に帰ろ」


靴を履き替えていたら、同じクラスの男子に肩を叩かれた。

今まで、女子にしか誘われたことがないのに。


「俺、今日部活ないからさ、たまには一緒に帰ろうよ」

「うん。いいよ」


朝岡(あさおか)壱流(いちる)君。


私とは中学のときから同じ学校で、爽やかな男の子。

明るくて優しいし、男女問わず人気がある。
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