お医者さんとの恋[短編]
でも、ちょっと待って…
先生と手が繋がれてるよ。
……大きな手にすっぽりと包まれるように、ふんわりと優しく握られている。
優しい先生に少し安心してまじまじとその姿を見てしまうと、
身長も高く、鼻筋もスッと通っていて、肌もとても綺麗
短い髪もセットされていて、モデルのようにカッコイイ
子ども扱いされていることくらいは分かっていて、
しかも相手は嫌いな医者なのにドキドキしちゃうよ。
「花音ちゃん、ここ座ろうか? 」
「…はい 」
気がつくと、診察室まで来ていて、丸い椅子に座るように促されてしまった。
その瞬間、現実に戻されて、さっきとは違った嫌な感じにドクンと鼓動が鳴る。
最近病院なんか行かないけど、
病院には嫌な記憶しかない。
私がまだ3歳の頃、高熱で痙攣を起こして病院に運ばれた。
3歳のときのことなんか、大して覚えてはいないのに、
ここで痛いことをたくさんされたのは、鮮明に思い出せるんだもん。
病院は私にとって痛いことする場所でしかない。