お医者さんとの恋[短編]
私の様子を見て、先生も目の前の椅子に座った。
「花音ちゃん、どこが悪いのか、先生に教えて 」
「えっと………」
症状を伝えないとなのに、緊張感で言葉が詰まって、うまく話せない。
面倒くさい患者だって呆れられちゃうよ。
診察室に静かな時間が流れる中、先生の顔も見れなくて目を瞑っていると、先生は椅子ごと近づいてきた。
「花音ちゃん 」
「グスン………ごめんなさい 」
怒られると思うと、目には涙が浮かんできてしまう。
「怒ってないから大丈夫だよ。
でも、花音ちゃんせっかく頑張って来てくれたんだから、辛いところ言ってほしい 」
先生は全く、怒ってなくて小さい子どもに言い聞かせるような優しい声だった。
その声に少し体の力が抜けて、目を開けてみると、先生と目が合って、ニコッと笑みを向けられる。
この先生なら、きっと大丈夫。
とっても優しい人だから………。