お医者さんとの恋[短編]
「全然、痛くないでしょ?
ゆっくり深呼吸してね 」
何箇所かにピタッと当てられる聴診器。
先生の言うとおり全く痛くはないけど、怖さが限界で目から水滴が溢れ落ちる。
「よしよし、花音ちゃん怖かったな 。
ちゃんと深呼吸頑張ってくれてありがとう 」
聴診器が体から離れると、先生の手は私の頭の上。
無理矢理診察されただけなのに、褒めてくれるなんて、優しすぎるよ…
病院は怖いのに、先生への怖さはスッと消えていった。
ゴシゴシ、手の甲で涙を拭くと、先生はパソコンの方にクルッと向きを変えて、何かを打ちこんだ。
そしてもう一度、私の方を見る。
「花音ちゃん、落ちついた? 質問大丈夫? 」
「はい…」
とても真剣そうな先生の顔。
何か悪い病気なのかな…?
治らない病気なんてことはないよね?
「大丈夫。大丈夫。そんなに心配しなくても 」
不安になり、先生の目から逃げるように真下に顔を向けると、上から優しい声が降ってきた。
先生は私の気持ち理解してくれているんだよね。