鈍感ちゃんと意地悪くんの出会いの物語
あたしの手を引く後ろ姿が、立ち止まることなく振り返って小さく笑った。

「一気に質問しすぎ。
もうちょい後でな」

「う、うん……」

そのあと彼は、訳が分からないままのあたしを連れて屋台でドリンクとたこ焼きを買い、迷うことなく真っ直ぐ観覧席へと向かった。

「あ、ここ……!
有料の観覧席だよっ?!
チケット持ってる人しか入れないとこ……!」

マズイよ、と後ろから彼のシャツの裾をくいくい引っ張るも、彼はきっちり二人ぶん空いていた席に、さも当然かのように腰を下ろした。

「ここ俺の席だし。
ほら、お前も座れって」

「で、でも……」

有料席はなかなか取れない上に、結構高額らしいし。
今日だって三人で無料で花火を観る予定で……。

って、お母さんとありさっ!
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