鈍感ちゃんと意地悪くんの出会いの物語
「やっぱりここにあった! お店になくて困ってたの! よかったぁ!」

背後のお母さんの声を聞きながら、あたしは胸を撫で下ろした。

こちらこそよかったよ……。

「じゃ、美空。
そんなわけだから、今日は悪いけど一人で朝御飯食べてってねっ!
新学期早々遅刻しないようにね!」

お母さんは何やら箱を抱えて玄関に戻ってきたかと思うと、慌てて靴を履きながら早口でそう言った。

「うん。行ってらっしゃい」

手を振るとお母さんも振り返してくれて、忙しなく部屋を出ていった。

閉じられたドアを暫くぼんやり見つめた後、ハッとなって部屋の壁掛け時計を確認した。

「あ、やばっ!」

今度はあたしが慌てる番になってしまった。
さっと身支度を整えて、用意してあった朝御飯をかきこむ。

「お父さん、今日は慌ただしくてごめんねっ! 行ってきます!」

お父さんの写真に手を合わせて、転がるように家を出た。
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