鈍感ちゃんと意地悪くんの出会いの物語
「ぶっ! そんな警戒するなって。名前呼び我慢する代わりにちょっとしたお願いがあるだけだから」

……。
さっぱり読めない瀬田くんの言うお願いって……。

ちょっとした、も怪しい。
あたし的には一大事かも知れない。あたしはますます身構えた。

「だから、警戒…… まいいか。
瀬田くん、じゃなくて瀬田って呼んでよ、な」

そのくらいいいだろ?
と、笑う瀬田くんに、首を傾げる。

「……お互いに、苗字て呼び捨てで手を打とうってこと?」

「そゆこと」

……。
何度も言うようだけど、同じ歳の男子とこんなに親しくしたことはない。
名前呼びはま逃れたけど、まさかあたしが男子を苗字と言え呼び捨てにする日が来るなんて、思ってもなかった。

「そ、それも慣れない、かなぁ」

あはは、と頭を掻くと、彼はニヤリと笑みを浮かべた。そんな顔も、ちょっと見慣れてきた自分がいる。
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