鈍感ちゃんと意地悪くんの出会いの物語
「あっ……」

「美空、声っ」

思わず漏れてしまった声に、小さく注意されて慌てて口を両手で塞ぐ。
じっと目線を動かさないあたしに、ありさもそちらを見つめた。

「わっ」

ありさもうっかり声を漏らしてしまって、あたしと同じように口を押さえた。

いた、瀬田だ。

袴姿で神妙な面持ちの瀬田が、開会式に参加している。

偉い人? の挨拶が終わり、試合に入る前の準備に取り掛かるために動き出した選手達。

あたしとありさは、その中にいる瀬田の姿を、さっき見つけて驚いた顔のまま、目で追っていた。

すると、チラリと向こうもこちらを見て、目が合った、気がした……。

って、まさかだよね。

あたし達さっききたばっかりだし、会場の隅だし、うっかり声出しちゃったけど、目立ってはいないはず……?

気づくわけがないよね?
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