鈍感ちゃんと意地悪くんの出会いの物語
正面玄関を抜けたあたし達。
周囲は卒業式特有な賑わいというか、そういう雰囲気が溢れていて、賑やかだ。

後輩から祝福されている卒業生や、花を抱えた先生や。

「あのっ! 立花さんっ!」

賑やかだなぁってキョロキョロ見渡しながら歩いていたら、声をかけられた。

「はい?」

声に振り向くと、男子生徒が二人立っていた。手に卒業証書を持っているところをみると、どうやら同級生で、今日の卒業生らしい。

とは言えあんまり関わりがなかったのか、どちらも知らない人物だ。

「なにか?」

「……ううっ……」

「……ほら」

話そうとしない二人組は、肘を小突き合っている。仲良くて楽しそうだけど、あたし関係ないよね?

何で呼び止めたんだろ。

「用なさそうだし行こう、美空」

「うん」

ありさに返事をして歩きだすと、

「あのっ!」

また呼び止められた。

「お、俺っ! ずっと立花さんのことがっ……!」
「美空」

瀬田に、前触れもなく手を引かれた。
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