旦那様、離婚はいつにしましょうか~御曹司と清く正しい契約結婚~
プロローグ
まだ外は冷たい北風が吹く三月。
私・七瀬里桜(ななせりお)は落ち着いた赤地に牡丹や梅といったたくさんの花々が鮮やかにちりばめられている振袖を纏い、高級料亭『味楽(みらく)』の立派な門をくぐった。
すると、私の前にも振袖姿で大きな椿の花を髪に挿した緊張気味の女性がいる。
仲居さんに店の奥へと促されている彼女も、おそらく私と同じようにお見合いに来たのだろう。
そうでなければ、私たちのような年頃の人間がこんな高級店に足を踏み入れる機会などまずない。
今日は二十八歳にして初めてのお見合いなのだけど、まったく気乗りしない。
そもそもお見合いなんてするつもりがなく、そろそろ結婚が決まっていてもおかしくない時期だったのに……。
「はー」
小さなため息が出てしまい、沈みそうになる気持ちを必死に立て直す。
お相手にはなんの罪もない。
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